ilyaのノート

いつかどこかでだれかのために。

誘導記事、あるいはプロパガンダの実践〔2009.1〕

▽誘導記事、あるいはプロパガンダの実践。
 →▼芸能:ZAKZAK|ますます買いづらく…アマゾン、特殊エロ規制の不思議〔2009/01/20〕
https://web.archive.org/web/20090121104341/http://www.zakzak.co.jp/gei/200901/g2009012021_all.html
「ますます買いづらく…アマゾン、特殊エロ規制の不思議 「獣姦」など狙い打ち「触手」は免れる」「インターネット書籍販売最大手のアマゾンがエロ、なかでも成年コミックへの規制を強化し、業界に衝撃が走っている。「アマゾンでの取り扱いは売り上げの1割を占める。相当な打撃」と成年コミックを中心に販売する出版社の関係者は語るが、不思議なのは今回狙い打ちされたのが「獣姦」「食糞」といった特殊なジャンルだということ。「いったい何が目的なのか?」と成年コミック業界関係者らは首をかしげている。/ 関係者によると、アマゾン側は昨年〔2008年〕12月上旬、一部の成年コミックを登録から削除した。」
「「ウチの出版物をチェックすると、何点かが消されていた。なかでも獣姦ものは徹底していて、獣姦専門で描いていた作家の作品はすべて消えていた」と成年コミック編集者は語る。〔中略〕一方で、軟体動物や空想の獣の触手に陰部を犯される「触手」分野は規制を免れた作品が多かったという。」
「出版関係者は「わざわざ『食糞』に限定しているところが意味不明。スカトロというジャンルの中でも食糞は非常に特殊。どうしてスカトロと言わずに食糞としたのか…」と、いぶかしがる。」
成年コミックに限らず、読者にとってアダルト系の出版物は一般書店の対面販売では買い辛い。そのためネット販売は、アダルト系出版社の重要な販売ツールとなっている。出版関係者は今回のアマゾンの措置について「まずは特殊なジャンルから始め、いずれはエロ全体をつぶしたい意図があるのではないか」と危機感を募らせている。」
「この件についてアマゾン広報部は「コンテンツを日々更新しているのは事実だが、具体的な修正についてはコメントできない」としている。」 「ZAKZAK 2009/01/20」


▽――明らかに誤誘導を狙った書きぶり。読者を呼ぶ記事の編集法。プロパガンダ。フレームアップすれすれを狙うこと。言い落とし。
▽記事中に「成年コミック業界関係者」「成年コミック編集者」「業界関係者」「出版関係者」として登場している人物(取材対象)。実質、何人に取材しているのか。
▽「なかでも獣姦ものは徹底していて、獣姦専門で描いていた作家の作品はすべて消えていた」と語るのは、栗田勇午作品を擁する版元の関係者であろうか。栗田勇午の獣姦コミック単行本は、タイトル中に「獣姦」の文字を含まなかったが、Amazon.co.jpのカタログから削除された(具体的に中身をチェックしたのか、内容紹介やキーワード類で引っかけたのか、あるいはカスタマーレビュー等から推定したのか、不詳。あるいは特定タイトルへの名指しのクレームがあった可能性も否定はできない)。


▽「「獣姦」「食糞」といった特殊なジャンル」が「今回狙い打ちされた」とあるが、そう言いうる根拠は何か?
▽実際には、そういった「特殊なジャンル」だけが排除されたわけではなく、「既に取り扱いを禁止している児童ポルノを想起させる商品」に加えて、「レイプ」「ドラッグ」といった犯罪にかかわるタイトル、「輪姦」「暴行」「乱暴」「凌辱」「虐待」等に関わるタイトルが一斉に削除されているAmazon.co.jpの二見書房への通知文書によれば、「違法性、残虐、虐待をテーマにした商品」「著しく嫌悪感を催すような商品」)。逆にいえば、獣姦や食糞も、そのうちの一つに過ぎない(「SM」が排除されなかったのはなぜか?)。

 →▼Amazon でジュニアアイドルのDVD(の一部)が取り扱い中止になっている件〔2007-09-01〕|児童小銃 http://d.hatena.ne.jp/rna/20070901/p1
 →▼日記〔2008年12月?〕|伊駒一平
http://www.adachi.ne.jp/users/showaben/NewFiles/nikki.html
●二見書房の方にアマゾンから連絡がありました/↓/ 『Amazon.co.jpでは既に取り扱いを禁止している児童ポルノを想起させる商品に加え、以下に該当するようなアダルト商品の取り扱いを、今後中止することにいたします。また発見した場合は直ちにカタログの削除を行います。/ ・違法性、残虐、虐待をテーマにした商品、または著しく嫌悪感を催すような商品/ —「残虐表現」「ドラッグ」「鬼畜系」「食糞」「獣姦」等の残虐表現を含むもの/ また商品登録の際に下記の文言を「キーワード」に登録することを禁じます。/ —「レイプ」「強姦」「輪姦」「暴行」「乱暴」「凌辱」「虐待」「残虐」「食糞」「獣姦」「ドラッグ」「鬼畜」その他著しく残虐または嫌悪感を催すような表現/ 上記に該当する商品の登録や、キーワードの登録があった場合は商品を削除させていただき、また削除にも拘わらず同じ商品を再度登録されたり、禁止されたキーワードを再度登録されたりといった状況がある場合、今後の取引をお断りすることもございますので、予めご了承くださいませ。』/ …だってさ。ま、それなら仕方ないね。これからはアダルトはほとんど取り扱わなくなるんじゃね?」


▽――そもそも、「なかでも成年コミックへの規制を強化」と成年指定マンガを特記しうる根拠は何か? 具体的に「なかでも」と言える比較データがあるのか。
▽実際は成年指定のなされたアイテム全般(コミック、実写問わずいわゆる18禁作品すべて)が規制対象になったのではないのか? 同じポルノグラフィでも、活字媒体や非成年コミック作品(「18禁マーク」のない作品)が規制対象から外されているのは確かな様子だが、実写コンテンツはどうか(ムック類はカタログに残っているようだ)。リサーチはなされたのか。
▽実写畑とマンガ畑のユーザ層の乖離。同じく、記者、また取材対象者にもマンガ部門しか“見えていない”だけなのではないか?(実写畑の版元、編集者には取材したのか?) 記事中、Amzon.co.jpと同時期、あるいはそれに先行して行われたDMM.comその他における獣姦作品規制は言及されない。視野狭窄。「分割して統治せよ」。


▽なぜ「食糞」が禁制ワードになったのか? 記事中にあるように、たしかに意味がわからない。「著しく嫌悪感を催すような商品」ということなのであろうが、ならば「スカトロ(スカトロジー」を排除すればよさそうなもの。スカトロが禁制というなら、その是非はともかく、獣姦との並びで理解はできる。なぜ唐突に「食糞」と限定して排除することになったのか。食糞描写に著しく嫌悪を覚えたというクレームでもあったのだろうか(そもそも食糞をテーマにした商品として具体的に排除されたタイトルがあるのか?)。
▽(仮にDMM.com同様にクレジットカード会社からの要請(圧力)説が事実なら、原文が外国語で、翻訳の過程で「食糞」なる単語が紛れ込んだ可能性は考えられないか?)
▽「獣姦」やら「食糞」やらが排除される一方で、「近親相姦」が生き残っているらしいのはおもしろい。また、その他、活字媒体(官能小説等)やムック類、BL作品等は、規制されていない様子(カタログに残っている)。背景にあるイデオロギー。また、それが表出されるまでにこうむる変容。


▽作家の成年コミック単行本で、先に示されたキーワードを含むタイトルは、すでにAmazon.co.jpのカタログから削除されているようだ。不思議なのは、複数人の作家が寄稿するアンソロジー形式のタイトルについては、カタログから削除されていないこと〔あるいはされにくい?こと〕。たとえば、『幼姦倶楽部 :ロリータ陵辱アンソロジー』といったヤバそうなタイトルのアンソロジーも、現時点〔2009年1月時点〕でカタログに残っている。
▽ということは、現実にはAmazon.co.jp は該当商品の排除を積極的に行っていない、とも言える。もちろん話題になったり指摘されたりすれば削除するのであろう。逆にいえば、指摘されるまで放置する方針なのか。(とすれば、この規制は本当にAmazon.co.jpの積極的な意志なのか?)
Amazon.co.jpのカタログは、各作家の個人作品集としての単行本(単著)と、アンソロジー形式の共著タイトルを、区別して管理しているのではないか? なぜ? 何のために?


▽関連:
 →▼Amazon.co.jpにおける一部ポルノ作品の排除〔2008年12月〕|ilyaの日記 http://d.hatena.ne.jp/ilya/20120315/1331828574
 →▼DMM.comにおける取り扱い中止ジャンル(2008年末)〔2009.1〕|ilyaの日記 http://d.hatena.ne.jp/ilya/20090203/1233674057


 →▼JKビジネス規制条例の真相〔2017.09.04〕 - 日刊サイゾー http://www.cyzo.com/2017/09/post_34292_entry.html