ilyaのノート

いつかどこかでだれかのために。

作業ノート1:「口蹄疫」:FAO

▽作業ノート:FAO「口蹄疫緊急時対策の準備 Preparation of Foot-and-Mouth Disease Contingency Plans」について。


口蹄疫緊急時対策の準備 Preparation of Foot-and-Mouth Disease Contingency Plans / FAO Animal Health Manual No. 16(2002)」
http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/Dr_Okamoto/Animal%20Health/Contingency%20Plans.htm
▼Preparation of Foot-and-Mouth Disease Contingency Plans|FAO
http://www.fao.org/DOCREP/006/Y4382E/Y4382E00.HTM
▼CHAPTER 6 EARLY REACTION CONTINGENCY PLANNING FOR A FMD EMERGENCY|FAO
http://www.fao.org/DOCREP/006/Y4382E/y4382e09.htm#bm9

▽「殺処分Stamping out」の方法、内容について。
▽「地区割りZoning」の技法:「(1)感染地区Infected zone / (2)発生動向調査地域Surveillance zone / (3)口蹄疫清浄地区FMD-free zone」の三段階を設定する。
▽訳者より、OIEコード(陸生動物衛生規約)「Chapter 4.3. Zoning and Compartmentalisation〔4.3章 地区割と区画化〕」の参照指示がある。



▼「第6章 口蹄疫の緊急事態に対する早期対処緊急時計画(仮訳)/鹿児島大学 岡本嘉六」
http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/Dr_Okamoto/Animal%20Health/Contingency%20Plans%20CHAPTER%206.htm
緒言/ この手引き書は、これまで口蹄疫清浄と考えられていた国の中で口蹄疫が国または地域に侵入する状況を主に取り上げる。そのような非常事態が起った場合、蔓延と風土病化への進行を避けるために、最初の感染地点または地域に病気を迅速に封じ込めることに集中するだろう。/ しかしながら、記載された戦略は、口蹄疫が風土病化した国がより良い制御計画を立てこの病気を徐々に根絶する手助けとしても使えるだろう。/ 各国は、清浄な国または地域(ワクチン接種の有無にかかわらず)の国際(OIE)認証のために提出すべき文書化された事例となるような証明可能な根絶を目標としなければならない。。」

▼「口蹄疫根絶戦略に影響を及ぼす疫学的特徴
「● 口蹄疫は伝播力が最も強い家畜伝染病の一つであり、急速に蔓延し得る。したがって、早期警戒は、まだ局所段階の間に侵入を発見するために不可欠である。重大な社会経済的影響なしでこの疾病を封じ込め、最終的に排除するには、早期の決定的は〔な〕対処が求められる効果的であるためには、決して数日ではなく、数時間以内の活動が成功を左右することから、可能な限り短時間で制御措置を講じなければならない。」「● 人間は口蹄疫に感受性がないが、しばしばウイルスを機械的に伝播する。」「● 感染動物は、臨床的徴候を示す数日前からウイルスを排出することがある。」「● 回復した牛、アフリカ水牛および羊は、様々な期間ウイルスの保有者となる。」「● 動物相互の直接接触が最も重要な伝播方法であるが、ウイルスはかなりの期間(とくに温帯気候において)環境中に生存し、媒介物による機械伝播も無視できない。」「● 口蹄疫ウイルスは、ある種の肉製品と乳製品中で長期間生存し、それらを豚に与えることがもう一つの伝播経路であり、とくに病気の国際的、大陸間の広がりにおいて重要である。」「● 温帯気候において風によりかなりの距離に広がることができる。また、多くの環境で地域的な空気伝播も発生する。コンピュータによるモデル化はこの広がりをある程度予測でき、地域割りや発生動向調査に役立てられる。」「● 感染とワクチン接種による抗体を識別できる血清学的検査(NSP ELISA試験)が現在、利用可能になっており、集団予防接種に基づく制御と根絶の計画の定期調査をより正確なものにできる。」――抗体を識別できる血清学的検査への言及は、マーカーワクチンの実現を指すか。


▼「口蹄疫根絶のための戦略
口蹄疫の制御と根絶に適用可能な基本的原則は以下のとおりである。」「●感受性動物へのウイルスの接触を遮断/ ・輸送中の動物の管理を含む輸入の管理と検疫/ ・適正な衛生と消毒の実施:汚染の可能性がある物資を清掃、消毒、および安全な破壊によって環境から排除する;汚染した飼料の家畜への給餌を止める。」/「●感染動物および感受性動物の接触を絶つ/ ・地区割り(Zoning)、感染または感染の疑いがある〔potentially infected〕農場や地域の検疫、家畜の移動制限、ならびに、柵などの物理的障壁の設置。」/「●家畜集団における感染または感染の可能性がある動物の数を減らす/ ・感染または感染の可能性がある動物の殺処分、ならびに、その死体の深い埋葬、焼却、または、レンダリング(訳注:化製場などの専用施設での処理)」/「●感受性動物の数を減らす/ ・家畜を減らすか、包括的なワクチン接種計画。」
「選択した戦略は、これらの取組み方のいくつか、または全ての組合せとなるだろう。完全な、あるいは、全ての状況に適用できる唯一の口蹄疫根絶戦略というものは存在しない〔There is no single FMD eradication strategy that is perfect or even appropriate for all circumstances〕口蹄疫の制御と根絶の戦略を検討する際に様々な方法に付けられる重点度は、疫学的要素、家畜飼育体系、地域社会の受容性、ならびに、想定費用に左右される。」
殺処分政策〔stamping-out policy〕は、高度に発達した畜産業がある国、とくに、護るべき家畜および畜産物の輸出を実際に行っているか行おうとしている国にとって、最も適しているだろう。後者の流れの中で、殺処分によって根絶がより速やかに達成され、その結果、口蹄疫清浄の国際的申立てが行われて受理されるまでの期間が短くて済むため、口蹄疫清浄国の資格の喪失〔loss of national FMD-free status〕および輸出不能〔inability to export〕の中断期間が短期で終わるだろう。大規模な殺処分キャンペーンは、短期的には、とても費用が掛り、資源を使うが、総合的な生産低下と貿易赤字〔に較べたら損害は〕によりも軽いかも知れない。」
「殺処分は、発生が早期に発見され〔outbreak can be detected early〕、未だ限定的〔still reasonably localized〕で検疫と家畜の移動制限によって封じ込められている場合に実行可能な案である。そのための必須の前提条件〔essential prerequisite〕は、感染地区の位置と範囲を迅速かつ正確に決定できる適正な疫学的能力が存在することである。それには、適切な疾病発生動向調査のみならず、感染した可能性がある動物〔possibly infected animals〕の遡及調査と追跡調査を容易にする個体識別システムも含まれる。」
殺処分政策を計画する国は、万一のための備えをもしなければならない口蹄疫の広がる速度が手の負えない状態〔rate of FMD spread gets out of hand〕になり、殺処分のための資源を凌駕した場合に、〔ワクチンの〕予防接種計画〔vaccination plan〕を持っていなければならない。特定地域における包囲予防接種〔Ring vaccination〕、的を絞った全面的予防接種〔targeted blanket vaccination〕、あるいは、ウイルス感染の広がる速度を抑制するための抑制的(勢いを削ぐ)予防接種〔suppressive (dampening-down) vaccination〕を適用することができる。予防接種は、解決困難な感染地帯にも使用できる。貿易のため口蹄疫清浄の申請を早くするため、予防接種した動物を殺処分することが望ましいかどうかの決定は後日可能である。」
「ほとんどの国において、大規模な殺処分は実行可能な選択肢ではない。そうした場合、家畜の移動制限と慎重な殺処分によって可能な限り支えられた的を絞った予防接種キャンペーンが強調される。系統的に行われれば、この方法で根絶が達成できる。」


▼「地区割り(Zoning)
「(訳注:「陸生動物衛生規約〔Terrestrial Animal Health Code〕」の「4.3章 地区割(Zoning)と区画化(compartmentalisation)」を参照)http://vetweb.agri.kagoshima-u.ac.jp/vetpub/Dr_Okamoto/Terrestrial%20Animal%20Health%20Code/Terrestrial%20Code%202008/CHAPTER_1_4_3.htm――このテキストはFAOのものだが、OIEコードを参照してよい? 両者の関係如何?
「地区割りは、特定の疾病制御活動が実行される地理的区域の宣言である。それらの区域は、一般的に、感染が判明したかまたは疑われる局地の周辺に設けられる同心円の形態を取り、その内側で最も徹底的な疾病制御活動が行われる。地区割り〔Zoning〕は、口蹄疫の国内侵入が起きた際に採用すべき初期活動の一つである。当該地区の実際の広さと形状は、行政境界線や地理的障壁によって決定されるか、または、疫学や資源に基づく要請によって左右される。しかしながら口蹄疫の広がりが主として感染した動物、動物製品あるいは汚染資材の移動によることから、一夜にして数百キロメートルや何千キロメートルもの離れた場所へ陸路や空路によって伝播が起きることがあるという事実認識を失念しないことはきわめて重要である。したがって、家畜やその他の食肉のような危険な資材の感染区域から清浄地帯〔free zones〕への移動が地理的障壁によって阻止されるか、または、管理措置が設けられるという高度の信頼性が確保できない限り、疾病を封じ込めるために感染区域の宣言に依存することは、流行期間において近視眼的となるであろう。効果的な防疫線の設定は多くの国において全く容易でなく、そのような措置は簡単に取止めとなることが経験されている。感染地区から離れたほとんど組織化されていない農場〔poorly organized farms〕は、感染地区内の良く管理された生産農場〔well-managed commercial farms〕よりはるかにリスクが高いことは明らかである。」
感染地区(Infected zone)/ 感染地区は、一箇所以上の感染した農場〔infected farms〕、施設または村を取巻く地域を含む。その広さと形状は、地理的特徴、物理的障壁、行政境界線、疫学的配慮(風による拡散の見込みと方角を含む)によって影響されるが、感染地区は大規模な家畜飼育地帯において疾病発生局地から少なくとも半径10km広範囲の家畜飼育が行われている地域においては半径50kmの周囲とすることが一般的に推奨される。また、感染地区の広さと形状は、実施される疾病制御活動の種類によっても影響される。徹底した殺処分が計画されている場合、感染地区の広さは周囲の最短とすることが望ましい。他方、予防接種キャンペーンが計画されている場合には、感染地区はより広くすることがある。/ 発生の初期段階〔initial stages of an outbreak〕において、感染地区の範囲がよく判らない時、より広い感染地区(場合によっては国土全体)を宣言し、それに伴う移動制限を行い、積極的な疾病発生動向調査によって発生の真の範囲が明らかにされた際に段階的に縮小することが賢明であろう。」
発生動向調査地域(Surveillance zone)/ 発生動向調査地域は、感染地区を含んでより広く、一箇所以上の感染地区を含むことができる。それは感染地帯と口蹄疫清浄地帯との間の緩衝地帯〔buffer zone〕として機能する。発生動向調査地域を決める際に、既知の家畜の移動様式を考慮しなければならず、その地方や行政区域の全て、時には、国全体となることがある。」
口蹄疫清浄地区(FMD-free zone)/ 口蹄疫清浄地区は上記を除いた国内地域である。しかしながら、口蹄疫が広範に広がっている可能性があることから、新たな発生に取組んでいる国のどこかを高度の発生動向調査を必要としない地域とみなすことは賢明でないだろう。清浄地区において強調すべきは、感染地区から病気が侵入するのを阻止するための厳格な検疫措置〔strict quarantine measures〕、ならびに、清浄を継続する証拠を提供するための継続的発生動向調査である。これらの地区は、発生が起きている地区〔the zones in which the outbreak occurs〕と同等の情報伝達の対象としなければならない。その情報は、適正で迅速な連絡を通して、近隣国に広げなければならない。」


▼「殺処分(Stamping out)
「緒言/ 殺処分による口蹄疫の根絶は、一連の前提条件が実施される場合にのみ成功し、それには注意深い高度の計画を必要とする。」「殺処分キャンペーンは、補償のための適切な規定がない限り検討してはならない。」

殺処分(Stamping out)」「感染地区において実施すべき活動/ 感染地区における全体的目的は次の二つである。/ ● 検疫と家畜の移動制限によって感染のさらなる拡大を阻止する/ ● 感染した可能性のある動物の殺処分、死体の安全な廃棄処分ならびに汚染除去の手順を通して、感染源を速やかに除去する」
殺処分(Stamping out)」「疾病発生動向調査〔Disease surveillance〕およびその他の疫学調査〔other epidemiological investigations〕/ 訓練された獣医官または獣医検査員のチームが、家畜群の頻繁な臨床的検査とともに、口蹄疫の積極的発生動向調査を行う。これらの獣医官または獣医検査員のチームは、検査する次の農場への感染の持込を防ぐために、防護服を着用し、適切な個人的汚染除去手順を実施しなければならない。/ 同時に、感染した群れが発見された場合には必ず、遡及調査と追跡調査を実施する。遡及調査は、最初の口蹄疫臨床症例の3週間前〔以降〕に感染施設に導入されたあらゆる新たな牛、豚、羊または山羊(これらが感染源だった可能性がある)の由来を判定し、その後疑わしい農場を点検する。追跡調査は、最初の臨床症例の前または後に感染施設から出荷された行き先を判定する。それらの動物によって感染した可能性がある全ての農場を点検する。しかしながら、それらの動物が家畜市場を経由した場合には遡及調査と追跡調査は格段に複雑になる。」
殺処分(Stamping out)」「移動制限〔Movement controls〕/ 生きた感受性動物種および動物由来製品の感染地区内外の移動の全面的禁止令を課すことは、不可欠である〔It is essential〕動物および動物由来が製品地域外に秘かに持ち出されないことを確保するために最大限の注意を払う必要がある。感染拡大の高いリスクがあるため、家畜市場とと畜場〔屠畜場〕は閉鎖しなければならない。/ 無許可の移動を阻止するため感染地区からの出口に検問所またはバリケードを設置することが必要となることもある。」
殺処分(Stamping out)」「感染した家畜およびその可能性がある家畜〔potentially infected livestock〕の殺処分」「感染した施設および危険な関連施設必要な場合にはさらに広範な地域にいる感受性のある全ての家畜はそれらが明らかに病気であるか否かにかかわらず〔they are obviously diseased or not〕、直ちに殺処分される。所有者には、殺処分チームが到着する前日に自分の家畜を集めて収容しておくよう要請しなければならない。動物福祉関連および作業の安全性を考慮に入れた方法によって、動物を殺処分しなければならない。」「(訳注:薬殺は頭数が多いと手間が掛るので非実用的である。銃殺や電殺は熟練した適格な技能員の仕事であり、未経験の獣医師がその場にいても役に立たない。獣医師は感染地区周囲の発生動向調査に当らなければならない。)」
「殺処分による疾病根絶の手順についてのマニュアルは、「FAO Animal Health Manual No. 12 (FAO, 2001)」の殺処分の手順に関するさらなる情報を活用すべきである。」
殺処分(Stamping out)」「死体の安全な廃棄処分/ 殺処分したかまたは口蹄疫で感染死した全ての動物の死体の廃棄処分はそれらの死体が、死肉を食べる動物や腐肉を食う動物、あるいは、飼料や水の汚染などによって直接または間接的に病原体がその他の感受性動物にさらに広がるリスクとならないようにするためである。死体はできるだけ速やかに(24時間以内が望ましい)廃棄処分しなければならない。最も一般的には、生石灰で覆った深い埋葬(地形の状態、地下水面との距離、および土木機械の利用性などの要素に依存する)、焼却(適切な燃料の利用性および山火事の危険性に依存する)、またはレンダリング(訳注:化製場などの専用施設での処理)によって行われる。レンダリングが使われる場合、水漏れしない車両で輸送しなければならない。現場での廃棄処分ができない場合、一般的な処分場まで密封車両で死体を輸送することもできるこれは常に感染地区内で行わなければならない。処分手順に関するさらに詳しい情報として、上記の殺処分による疾病根絶の手順についてのマニュアルを活用すべきである。」