ilyaのノート

いつかどこかでだれかのために。

作業ノート:下請法と創作物(商業マンガ)を考える

〔※以下の検討は法律の素人の手による覚え書きです。内容に根本的な誤りが含まれている可能性があります。必ず専門家に確認してください。 また、誤りをご指摘いただければ幸いです。〕


▽Q. 創作的な著作物(小説、漫画など)の制作に「下請代金支払遅延等防止法」(以下、「下請法」)は適用されるのか?

▼Togetter - 「漫画業界の問題点」 http://togetter.com/li/71544
「あえてとりあげるのは、いくつかの出版社で慣習として画稿料の発生しない絵がある点だ。 たとえば単行本の表紙。 自分の漫画の表紙なのだから、サービスで描いてもいいだろうというのは分かるし、自分もそれに甘んじている。 しかしまっとうなビジネスとして考えた場合は問題が出てくるのだ。/ @misoka09 2010-11-22 12:00:01」 「単行本表紙は、出版社が漫画を「自社商品」として売り出すためのパッケージイラストなのだ。 それを作家に依頼しているのだから、画稿料が発生しないというのはおかしな慣習だ。/ @misoka09 2010-11-22 12:02:59」
「@misoka09 詳しくないですが、下請法の適用ってあるのでしょうか…/ @papamasa2010 2010-11-22 12:45:29 」
▽「@papamasa2010 適用されるので、裁判にかければもしくはという所だと思います。/ @misoka09 2010-11-22 12:59:48」


▽まず、出版者から発注を受けた「漫画」や「小説」「エッセイ」等の制作一般が、下請法に言う「情報成果物作成委託」「役務提供委託」に該当するか否か。web上のリソースを参照する限り、“創作性の強い著作物”の制作には下請法は適用されない、と考えられる(出版社の資本金額による条件は措く*1)。
▽次に、単行本の表紙イラストを「パッケージイラスト」と考えた場合は、どうであろうか。商品パッケージに用いる絵、イラストは下請け法の適用を受けるか? 受注条件によっては適用される可能性がなくはない、のではないか。*2


▽直接に関係する法規としては、「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」、それに関連して公正取引委員会の所管する「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」などの各種ガイドラインが存在する。 なお、下請法は「独占禁止法私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の特別法(特例法)にあたる(下請法の対象とならない取引も、独禁法の対象となる可能性がある)。
▽そもそも「下請け」また「請負」の法的定義如何。「業務委託」の請負が「下請け」なのか。「請負」は民法に規定がありそう(請負契約)。


▼法律が対象とする下請け行為の範囲。下請法 第2条に示される「定義」を適宜補足加工して掲げてみる。(※解釈の妥当性、注意)
 →▼下請代金支払遅延等防止法〔下請法〕(昭和31年法律第120号)|e-gov http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S31/S31HO120.htmlhttps://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=331AC0000000120_20150801_000000000000000
▽《情報成果物 作成委託》 =「3 この法律で「情報成果物作成委託」とは,【A】事業者が、業〔事業〕として行う提供 もしくは業〔事業〕として請け負う作成 の目的たる──他者への提供(頒布?)または発注者への作成・納入を目的とする──情報成果物の作成の行為〔情報成果物を作成する行為〕の、全部又は一部を 他の事業者に委託すること〔→運用基準 類型3-1, 3-2、及び【B】事業者が“その〔自ら〕使用する情報成果物の作成”を業〔事業〕として行う場合に、その情報成果物の作成の行為の 全部又は一部を他の事業者に委託すること〔→運用基準 類型3-3をいう。」。
▽《役務 提供委託》 =「4 この法律で「役務提供委託」とは,事業者が、業〔事業〕として行う〔他者への〕提供の目的たる役務の提供の行為の、全部又は一部を 他の事業者に委託すること(〔建設業に関する除外、省略〕)をいう。」
▽《情報成果物》 =「6 この法律で「情報成果物」とは,次に掲げるものをいう。/  プログラム(電子計算機に対する指令であつて,一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)/  映画,放送番組その他、影像又は音声その他の音響により構成されるもの/  文字,図形、もしくは記号、もしくはこれらの結合 又はこれらと色彩との結合により構成されるもの/  前3号に掲げるもののほか,これらに類するもので〔別に〕政令で定めるもの」


▼委託行為の定義等については、公取委ガイドライン下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」に定義がある。
 →▼下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準:公正取引委員会 http://www.jftc.go.jp/shitauke/legislation/unyou.html
▽《委託》 =「なお, この法律で「委託」とは,事業者が,他の事業者に対し,“給付〔債務?〕に係る〔かかる〕仕様,内容等を指定して”物品等の製造(加工を含む。)、もしくは修理,情報成果物の作成 又は役務の提供 を依頼することをいう。」
▽《情報成果物の例》 =「(2)「情報成果物」とは,次に掲げるものをいう。/ プログラム〔略〕 例:テレビゲームソフト,会計ソフト,家電製品の制御プログラム,顧客管理システム/  映画,放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの〔略〕 例:テレビ番組,テレビCM,ラジオ番組,映画,アニメーション/  文字, 図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの〔略〕 例: 設計図,ポスターのデザイン商品・容器のデザインコンサルティングレポート,雑誌広告/  前三号に掲げるもののほか,これらに類するもので政令で定めるもの〔略〕 現時点において,政令で定めているものはない。」
▽──第2条6-三 の例として、典型として示されそうな「小説」や「漫画」などの創作物は挙げられない。「デザイン」業等は明示的に例示されている。なお、「ポスターのデザイン」と明示されているが、ポスターの図案やイラストなどは含まれるのか、不詳(「運用基準」にいう「給付に係る仕様,内容等を指定して」にあたるか否かが判断基準となるか)。


下請代金支払遅延等防止法〔下請法〕|公正取引委員会 https://web.archive.org/web/20110630201659/http://www.jftc.go.jp/sitauke/act.html
▽(制定)昭和31年6月1日 法律第120号。(最新改正)平成21年6月10日 法律第51号。
「(目的) 第1条 この法律は,下請代金の支払遅延等を防止することによつて,親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに,下請事業者の利益を保護し,もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。」
▼下請法ホーム|公正取引委員会 http://www.jftc.go.jp/sitauke/index.htmlhttp://www.jftc.go.jp/shitauke/index.html
▼下請法関係〔ガイドライン各種〕|公正取引委員会 http://www.jftc.go.jp/seirei/guidoline/sitauke.htmlhttp://www.jftc.go.jp/shitauke/index.html
▼よくある質問コーナー(下請法関係)|公正取引委員会 http://www.jftc.go.jp/sitauke/qa/index.htmlhttp://www.jftc.go.jp/shitauke/sitauke_qa.html
▼各種パンフレット|公正取引委員会 http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.html


下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準/(全部改正)平成15.12.11 公正取引委員会 事務総長通達第18 号|公正取引委員会 〔PDF〕 https://web.archive.org/web/20070412071237/http://www.jftc.go.jp/sitauke/guideline.pdf *3
「なお, この法律で「委託」とは,事業者が,他の事業者に対し,給付に係る仕様,内容等を指定して物品等の製造(加工を含む。)若しくは修理,情報成果物の作成又は役務の提供を依頼することをいう。」
1 製造委託」「(2) この法律で「業として」とは,事業者が,ある行為を反復継続的に行っており,社会通念上,事業の遂行とみることができる場合を指す(修理委託,情報成果物作成委託及び役務提供委託においても同様である。)。」
第2 法の対象となる取引」 「3 情報成果物作成委託」 「(4)「情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」とは,情報成果物の作成のうち,(1)情報成果物それ自体の作成,(2)当該情報成果物〔の一部〕を構成することとなる情報成果物の作成を,他の事業者に委託することをいう。」
「(5) 事業者が提供等する情報成果物の作成においては,情報成果物の作成に必要な役務の提供の行為を他の事業者に委託する場合がある。この場合,当該役務が,委託事業者が 他者に提供する目的たる役務 である場合には,第2条第4項の「役務提供委託」に該当するが,当該役務が〔委託事業者が〕 専ら自ら用いる役務 である場合には,当該委託取引は,本法の対象とならない(下記の「4 役務提供委託」を参照)。」
「(6) 情報成果物作成委託には,次の3つの類型がある。/ 〔A〕類型3-1 事業者が業として行う提供の目的たる情報成果物の作成の行為の 全部又は一部を他の事業者に委託すること。/ 〔B〕類型3-2 事業者が業として請け負う 作成の目的たる情報成果物の作成の行為の 全部又は一部を他の事業者に委託すること。/ 〔C〕類型3-3 事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合に その情報成果物の作成の行為の 全部又は一部を他の事業者に委託すること。」
第2 法の対象となる取引」 「4 役務提供委託/〔略〕 (2)「業として行う提供の目的たる役務」のうち「業として行う提供」とは,反復継続的に社会通念上 事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい,純粋に無償の提供であれば これに当たらない。また,「提供の目的たる役務」とは,委託事業者が他者に提供する役務のことであり,委託事業者が自ら用いる役務はこれに該当しないので,自ら用いる役務を他の事業者に委託することは,法にいう「役務提供委託」に該当しない。他の事業者に役務の提供を委託する場合に,その役務が 他者に提供する役務 の全部若しくは一部であるか,又は 自ら用いる役務 であるかは,取引当事者間の契約や取引慣行に基づき判断する。」

▼PDF:「コンテンツ取引と下請法」|公正取引委員会 https://web.archive.org/web/20130326042935/http://www.jftc.go.jp/sitauke/contentspamph.pdf


▼PDF「改正下請代金支払遅延等防止法 テキスト」〔2005年1月〕|株式会社HiSC 〔PDF〕 https://web.archive.org/web/20070216012334/http://www.hisc.co.jp/mcontents/data/norths/03/out_image/s001470_01.pdf
▽「公正取引委員会」の署名のある文書PDF。平成16年〔2005年〕1月の日付。資料編も充実しており、関連法規が一揃いになっている。
イ 製造委託(第2条第1項)」 「「製造委託」とは,事業者(製造業者のほか商社や百貨店などの販売事業者も含まれる。)が他の事業者に物品(その半製品,部品,附属品,原材料及びこれらの製造に用いる金型を含む。)の規格・品質・性能・形状・デザイン・ブランドなどを指定して製造(加工を含む。)を依頼する場合をいう。」 「規格品・標準品を購入することは,原則として製造委託の対象とはならないが,下請法の規定では,親事業者が下請事業者に委託する取引を対象としているので,規格品・標準品であってもその一部でも自社向けの加工などをさせた場合には対象となり,さらにカタログ品〔既製品〕等でも汎用性が低く,下請事業者が委託を受けてから生産するような場合には,「製造委託」に該当する。」
エ 情報成果物作成委託(第2条第3項)」 「「提供」とは,事業者が,他者に対し情報成果物の販売,使用許諾を行うなどの方法により当該情報成果物を他者の用に供することをいう。この提供には,物品等の付属品(例: 家電製品の取扱説明書の内容,CDのライナーノーツ)として提供される場合,制御プログラムとして物品に内蔵される(例: 家電製品の制御プログラム)場合,商品の形態,容器,包装等に使用するデザインや商品の設計などを商品に化体して提供する場合(例: ペットボトルの形のデザイン,半導体の設計図)も含まれる。/ 情報成果物の提供が,純粋に無償の場合(例:広告宣伝物,リクルートビデオ)には「業として行う提供」には当たらず,類型1には該当しないが,この場合であっても類型3には該当する可能性がある。」
オ 役務提供委託(第2条第4項)」「(自ら用いる役務の委託に該当し,役務提供委託に該当しない例)/ ○ホテル業者が,ベッドメイキングをリネンサプライ業者に委託すること。/ ○工作機械製造業者が,自社工場の清掃作業の一部を清掃業者に委託すること。/ ○鉄鋼製造業者が,顧客渡しの条件で販売した鉄鋼を販売先に運送する作業を運送事業者に委託すること。/ ○カルチャーセンターを営む事業者が,開催する教養講座の講義を個人事業者である講師に委託すること。/ ○イベント会社が,自社で主催するコンサートの歌唱を個人事業者である歌手に委託すること。」──ここで「自ら用いる役務の委託」の例として挙げられているケースは類推しやすい。


▼PDF「出版社における改正下請法の取扱いについて」〔2004年3月〕|社団法人 日本書籍出版協会 〔PDF〕 https://web.archive.org/web/20121014053745/http://jbpa.or.jp/pdf/guideline/sitauke0403.pdf
下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という)の改正が平成15年〔2003年〕6月に行われ、平成16年〔2004年〕4月1日から施行されます。/ 出版社においては、従来から製造委託において、書籍・雑誌等の出版物(以下「出版物」という)の印刷・製本を印刷・製本会社に委託することが下請取引の対象となっています。」
「この法改正により、ソフトウェアやテレビ番組等の情報成果物の作成委託や役務の提供委託などが下請法の対象となります。改正下請法の施行に当たり、出版物を提供する出版社が留意すべき事項について、改正法令及び運用基準を受け、公正取引委員会事務総局との意見交換を行い、ここに取扱い上の留意点を参考資料としてまとめました。/ なお、製造委託に関する下請取引は、従来どおりですが、「2.親事業者の義務」以下は、改正下請法によることになりますので留意願います。/ 会員各位におかれては、法の趣旨をご理解の上、適切な対応をお願いいたします。」
▽──「公正取引委員会事務総局との意見交換を行い」とある。このPDF文書が公正取引委員会の認識と合致している、下請法の解釈として正当性を持つ、と考えてよいということか。
1.出版物の作成委託に関する法の対象となる取引について/ (1) 適用範囲について/ (1)対象外となる取引/ 製造委託(情報成果物の場合は作成委託)においては、汎用性がある規格品・標準品であって特定の仕様に基づいて親事業者から製造を委託されている訳ではないものは製造委託に該当しないとされています。/ 出版物の内容である著作物は、特定の出版社の出版物への掲載以外にも広く利用される等汎用性が高く、かつ、作成を委託する際に出版社が定める仕様に基づいて作成を委託している訳ではないものもあり、このような著作物は情報成果物の作成委託に該当せず、下請取引の対象外として取扱われます。/○作家(執筆者)が創作する小説、随筆、論文等、および美術、写真、漫画等の作品
▽──製造委託と情報成果物作成委託は並列できる、のか。製造委託についてのガイドラインは情報成果物作成委託についても適用されるのか。(前掲「下請法 テキスト」も参照。)
(2)対象となる取引/ 出版物の作成委託においては、汎用性が少なく、特定の出版社の出版物以外に利用されないもので、「給付に係る仕様、内容等を指定して」作成を依頼する次のようなものは、概ね下請取引の対象として取扱われます(法2条3項・4項、運用基準 第2)」
「〔類型3−1〕事業者が業として行う〔他者への〕提供の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合」 「類型3−1の例: ○出版社が発行する書籍、雑誌の作成を、編集プロダクション等に委託すること/ ○出版社が発行する出版物のために、装幀、表紙デザイン、レイアウト等の作成を委託すること/ ○出版社が、特定の仕様・内容を指定して原稿の作成を委託すること
▽──出版社が「特定の仕様・内容を指定」して発注した「原稿」には下請法が適用される、とある。かつ、前掲の「汎用性が少なく、特定の出版社の出版物以外に利用されないもの」は下請法の適用を受ける、ということか。後掲「改正下請法に関するQ&A〔書協〕」のQ8も参照せよ。
「〔類型3−2〕事業者が業として請け負う作成〔・納入〕の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合」 「類型3−2の例: ○出版社が、自費出版を引き受け、他の事業者に作成の全部又は一部を委託すること/ ○編集プロダクション等が制作を請け負う書籍、雑誌のレイアウトを他の事業者に委託すること」
「〔類型3−3〕事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合」 「類型3−3の例: ○通常自社の書籍、雑誌の広告物を作成している出版社が、広告物の作成の全部又は一部を他の事業者に委託すること」
「(2) 下請法の対象とならない役務提供委託について/ 役務提供委託の対象となる役務は、役務提供事業者が、他者に提供する役務であって、委託する事業者が自ら利用する役務を他の事業者に委託することは含まれません。/ 出版社においては、出版物(書籍、雑誌)の作成に必要な役務の提供を他の事業者に委託する場合がありますが、当該役務が専ら自ら用いる役務である場合には、役務提供委託の対象にはなりません。/ 【役務提供委託の対象にならない例】/ ○週刊誌、月刊誌等の取材等について、他の事業者に役務の提供を委託すること/取材(編集者等の指示・同行による写真取材も含む)、紙面整理、割付等は、週刊誌、月刊誌等の作成に必要な役務の提供の行為であり、専ら自ら用いる役務に該当/ ○書籍、雑誌等の校正を他の事業者に委託すること


▼PDF「改正下請法に関するQ&A」|社団法人 日本書籍出版協会 〔PDF〕 https://web.archive.org/web/20121014053802/http://jbpa.or.jp/pdf/guideline/sitaukeQA.pdf
Q5: 無償で配布する出版目録や販促用のポスター,内容見本,チラシなどの作成を委託することは,下請法の対象となるか。/ A5無償で他の者に提供する情報成果物の作成(出版目録や広告・チラシの原稿,ポスターの原画の作成等)又は物品の製造(出版目録,ポスター,チラシの印刷)を委託する場合には,下請法の対象とならない。ただし,これらを自社で反復継続的に製造又は作成している事業者がその製造又は作成をいわば「肩代わりしてもらう」形で他の事業者に委託する場合は,下請法の対象となる。」
Q8アメリカで発行された小説を翻訳出版するに当たり,翻訳者にその翻訳を委託することが下請法の対象になるか。/ A8: 通常、翻訳者に翻訳を委託する際,出版社が定める仕様に基づいて作成を委託する訳ではなく,翻訳者独自の表現によって翻訳されるなど,このような汎用性のある翻訳作品は,情報成果物作成委託に該当しない。但し,出版社が,特定の仕様・内容を指定して翻訳を委託する場合は,情報成果物作成委託に該当する場合がある。」
Q10: 当社(出版社)は,自費出版の作成の委託を受けているが,その編集作業等をプロダクションに委託し,印刷・製本の製作を印刷会社に委託するが,下請法の取扱いはどうか。/ A10編集プロダクションへの編集作業等の委託は,情報成果物の作成を業として請け負っている事業者〔=出版社?〕が,他の事業者〔=ここでは編集プロダクション?〕に委託する場合に当たるので情報成果物作成委託の対象となる。また,印刷会社への印刷・製本委託は製造委託に該当し下請法の対象となる。」
Q11: 週刊誌、月刊誌の取材、紙面整理、割付などを他の者に委託する場合は、情報成果物作成委託ではなく、これらについては,編集者等の指示のままに作業をする場合には自ら利用する役務に該当すると考えてよいか。/ A11: 書籍・雑誌等の出版物の作成に必要な役務の提供を他の事業者に委託する場合、専ら自ら利用する役務に該当するときは,情報成果物作成委託にも役務提供委託にも該当しない。質問のケースは,取材(編集者等の指示・同行による写真取材も含む)、紙面整理、割付等は、週刊誌、月刊誌等の作成に必要な役務の提供に当たり出版社が専ら自ら用いる役務であるので,下請法の対象とはならない。なお,それが労働者派遣法の対象となるような場合には,そもそも下請法上の委託に該当しない。」

総務省|「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン(第2版)」の策定 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02ryutsu04_000015.html
▼PDF「下請法に関するQ&A」|社団法人 自動車公正取引協議会 https://web.archive.org/web/20120623193343/http://www.aftc.or.jp/pdf/subcontract%20_qa_hp_panf.pdf


▼下請法の勉強会に行ってみた|SATi log. http://satiyamaguchi.blogspot.com/2010/02/blog-post.html
「さてさて、今回のメインテーマは/ 下請法。/ 公正取引委員会のお方が講義してくださいました。」「例えば〔下請法に〕どういう項目があるかっていうと、/ ・明らかに安い値段で買い叩いちゃだめよ/ ・口頭じゃなくってちゃんと発注書を作って発注してね/ ・下請け側の落ち度がないのにキャンセルはなし/ ・支払いはきっちり期限内によろしく!/ みたいな内容です。」
「結論から報告しますと、フリーランサーのフォトグラファー、スタイリスト、ヘアメイクのうち、この下請法が適用されるのは/ フォトグラファーのみ。/ それはフォトグラファーは「」の制作を委託されてて、スタイリストやヘアメイクは「」の役務の委託だからだそうで。/ん〜、分かりやすく理解しようとすれば、フォトグラファーは「写真を納品」するからってこと?/ なので雑誌の仕事で出版社から撮影を依頼されたり、広告の仕事で広告代理店から依頼される場合、フォトグラファーには下請法が適用される、ってことみたいです。/ ってことはイラストレータや、グラフィックデザイナーも適用されるんじゃないかしらね。」
「そんで「技」チームの方々ですが、このチームに下請法が適用されるパターンとしては、「下請け」から「下請け」した時。/ 考えられるケースとしては、出版社が編集プロダクションに委託した仕事を、編集プロダクションから請ける場合とか?/一応、コレも下請けの下請けだよね。/ でもこの場合にも色々条件があるようで、出版社が編集プロダクションに/ 「スタイリングは山口さちこさんでね!」/ って指名してなきゃだめらしい。/ 出版社が編集プロダクションに「雑誌のページ制作」を委託したのかスタイリスト・山口さちこの発注」を委託したのか、それで変わってくるみたいなんだよね〜。」「でもさ、編集プロダクションが出版社からどういう内容で仕事を請けているかなぞ、あたしたちは知る由もない訳で。まぁ実際かなり現実味のない話であります。/ 更にこの下請法、発注元が資本金1千万円以上の事業者ってことなので、編集プロダクションによっては適用されず、フリーのエディターさんから仕事請ける場合には、全く適用されない訳でありますね。」
「ちなみに制作物の「二次使用」に関しては、下請法ではなく著作権の範疇になるのでまた別の話。/ 最近は雑誌のページ用に撮影した写真を、そのままリーフレットに使ったり、WEBサイトに掲載したり、はたまたデジタル書籍やアプリなどで配信したりと、二次使用祭りの業界と化しているんですけれど、これに関して現状法律で権利が守られているのは、/ 著作権のあるフォトグラファー/ と/ 肖像権のあるモデル/ のみっす。/ これまたスタイリストとヘアメイクは対象外と。」
「さて、フォトグラファーが下請法で適用されるであろう、具体的なケースなどに関しては、また別に書きたいと思います。/ あたしも今回初回で2H〔2時間〕程度話聞いただけなので、だいぶ理解してないと思うので、/ こわい突っ込みしないでくださいね!」
▼下請法:フォトグラファーの場合|SATi log.: http://satiyamaguchi.blogspot.com/2010/03/blog-post_10.html


▼下請法と翻訳者〔2008年1月24日〕|Party in My Library https://web.archive.org/web/20170329114908/http://partyinmylibrary.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_69c2.html
「結局、最初に約束した金額の7割を受け取ることで合意したが、その時、担当部長が言った言葉が忘れられない。/「契約書をよく読んだのですが、翻訳者の方にとってはきわめて不利なものですね」/ 確かに出版翻訳に関する契約書というのは、私が交わした限りでは極めて曖昧なものが多く、翻訳者に不利な状況に関する規定がない。たとえば上記の、出版が取り止めになった場合、どうするかといった規定などもない。私の場合は、こちらの鼻息が荒かったせいもあっただろうが、事を荒立てるのは会社にとって利益にならないと、担当部長がいわば「大人の判断」をして、7割を支払うことで決着させたのである。/ ところが今は下請法(下請代金支払遅延等防止法)(参考)というのがある。」
『第1条 この法律は,下請代金の支払遅延等を防止することによって,親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに,下請事業者の利益を保護し,もって国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。』/ となっており、私のような個人翻訳者には心強い言葉であり、翻訳業務というのは下請法にいう「情報成果物作成委託」に該当し、同法の適用対象となる(参考)。」──※ただし、文芸翻訳などは対象外となる可能性が高い。
https://web.archive.org/web/20130212225204/http://www.jftc.go.jp/sitauke/qa/index.html
「但し、給付(つまり翻訳文)の「瑕疵に基づく場合」や「納期の遅れによる給付の価値の低下」など、「客観的に相当と認められる範囲内での減額」は認められている(公正取引委員会相談窓口の回答より)。つまり、誤訳や訳文の拙さなどで翻訳会社が大幅に手直しした場合や約束の納品日時に遅れた場合などには、翻訳会社は翻訳料を減額することができる。」
「6の「物の購入強制・役務の利用強制の禁止」については、特定のアプリケーション・ソフトウェアを、「当社の翻訳作業では必須である」と言って購入させる会社があるらしく(私個人は経験がない)、はたしてその購入金額に見合うだけの仕事が発注されるのかというと、そうでもないケースが多いようだ。真っ当な会社というのは、たとえば翻訳支援ツールなどでも、ベンダーとコーポレート・ライセンス契約を結んでいて、翻訳者には無償で貸与してくれるところが圧倒的に多い。これも或いは処世術の部類になるのだろうが、まともに仕事も発注しないうちから「あれを買え、これを買え」と言ってくる翻訳会社は要注意である。」
「ところで、下請法に違反しているかどうかの判断はどう行ったらよいのか。その点については公取委相談窓口(参考公正取引委員会トップ→下請法ホーム→相談・申告窓口〕)を設けているので問い合わせてみるのがよい。電話でも相談に応じてくれる。また、取引をしている翻訳会社が、この下請法の規定に違反していると判断された場合はどうするべきか。最も手っ取り早い方法は公取委に「申告」して、調査を依頼するというものである(参考)。公取委が調査開始を決定するかどうかは、実際に依頼した後でないと分からないし、調査開始が決定されても、その結果が自分に有利なものになるという保証はなく、また、最終的な結論が出るまでに時間がかかり、こちらから問合せしない限り、公取委から結果の報告がくることもないなど、利用者からすると不満の残る制度ではあるが、弁護士や司法書士に相談するのとは違い、費用は一切かからない。」


▼下請法とは?|業務委託契約書の達人 http://www.gyoumuitakukeiyakusho.com/category/sitauke/01.html
「下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」というように、もともとは下請契約における代金の支払遅延の禁止を中心とした法律です。/ これらの問題は、本来、独占禁止法上の問題です。実際、公正取引委員会は、昭和29年〔1954年〕に「下請代金の不当な支払遅延に関する認定基準」という基準を公表し、独占禁止法の「優越的地位の濫用の禁止」の運用によって、これらの問題を解決を図ろうとしました。しかし、結局は問題の解決にはいたりませんでした。このため、独自の法律として、昭和31年〔1956年〕に下請法が制定されました。/ このように、下請法は、抽象的であいまいな独占禁止法の優越的地位の濫用の禁止をより具体化したものです。このため、下請法は、独占禁止法の特別法と考えられています。この考え方は、下請法が適用されない下請契約の場合に重要となることがあります。」
▼「コンテンツ業界と下請法」 〜総務省ガイドラインの紹介 松島恵美〔2009.7.28〕|骨董通り法律事務所 http://www.kottolaw.com/column_090728_1.htmlhttp://www.kottolaw.com/column/000039.html
「先日(〔2009年〕7月10日)、今年〔2009年〕2月25日に公表された、「放送コンテンツの製作取引適性化に関するガイドライン」の第2版が、総務省から公表されました。/(http://www.soumu.go.jp/main_content/000030633.pdf)」
「このガイドラインは、放送局から番組制作会社への番組制作発注場面における事例をとりあげ、下請法(正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」)を中心とした、独禁法(正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」)及び著作権法などの適用されうる法律に関して、放送の監督官庁である総務省の考え方を説明しています。/ 下請法については、運用主体である公正取引委員会がすでに運用基準や指針等を発表していますが、総務省が放送局の番組制作現場の事例に関して公表したこのガイドラインは、放送コンテンツ制作現場に携わる方にとって、監督官庁の考え方を知るために参考となります。/ また、ガイドラインで説明されている考え方は、放送局から番組制作会社への発注だけではなく、広告代理店から広告制作会社やデザイナーへの発注番組制作会社からフリーの個人クリエイターへの発注などにも応用できます。/ コンテンツ制作に携わる方に、このガイドラインの内容を一読されておくことをおすすめします。」
▼PDF:「【カンタン解説シリーズ】下請法およびその改正内容」〔税理士 北岡修一〕|東京メトロポリタン税理士法人 https://web.archive.org/web/20160428125555/http://www.tm-tax.com/information/topics/pdf/k31.pdf
「1.下請法の対象範囲/ 【従来の範囲】/◆製造委託(物品の製造にかかる下請取引)/◆修理委託(物品の修理にかかる下請取引)/ 【改正に伴う追加業種】/◆情報成果物作成委託(情報成果物の作成にかかる下請取引)/◆役務提供委託(役務の提供にかかる下請取引)/◆金型製造委託(金型の製造にかかる下請取引)」
「◆情報成果物とは、ビジネスソフトやゲームソフト、テレビ番組、音楽、CM等の制作物など、様々なものがあります。俗にいうコンテンツ制作業ですね。これらは、すべて下請法の対象になってきます。」「◆役務提供にも様々なものがあります。運送業や自動車整備業、清掃やビルメンテナンスなど、すべての役務提供サービスが下請法の対象になってきます。」
「2.資本金区分の整備/ ◆上記業種に該当しても、下請法の規制対象になるのは、一定の資本金以上の会社です。今回、親事業者と下請事業者の資本金区分が次のように整理されました。〔略〕/ 上記の表は、左側の親事業者から、右側の下請業者に発注する時に、下請法の監視下に入りますよ、ということです。いずれの場合も、資本金が1千万円を超すと、1千万円以下の会社・個人業者に発注するときは、注意が必要、ということになります。/逆に言えば、資本金が1千万円以下であれば、いずれの場合も親事業者にはならない、ということです。」
▼デザインに係る主な法律|デザイン事務所の雑記帳 http://d.hatena.ne.jp/IguchiDesignOffice/20100927/1285578325
「デザインに係る主な法律/ (1)特許法 〔略〕/(2)実用新案法 〔略〕/(3)意匠法 〔略〕/(4)商標法 〔略〕/(5)不正競争防止法 〔略〕/(6)著作権法 〔略〕/(7)PL法(製造物責任法)〔略〕/(8)下請法 〔略〕」
▼クリエイターと知的財産権活用|アイピーピー国際特許事務所 http://www.ippjp.com/web/katsuyo_creator.html
クリエイターと下請法/ 知的財産権ではないですが、クリエイターの営業上のトラブルを保護する「下請法」(校正〔公正〕取引委員会)という権利があります。/これは、下請作業者への代金遅延、不当な下請料金設定、下請者に責任がないのに、納品物を受領しないなど、営業上の不当な取引から保護可能な法律ですので、基本的な知識をもっておいた方がよいでしょう。/日本デザイン事業共同組合のサイトに詳細が掲載されています。」
下請代金支払遅延等防止法(index)|JDBホームページ〔日本デザイン事業共同組合〕 http://www.jdb.or.jp/shitaukehou/index.html


産業構造審議会 知的財産政策部会 第1回意匠制度小委員会 議事要旨〔2004年9月15日〕|特許庁ホームページ https://web.archive.org/web/20140414173926/http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/isyou_01giji.htm
「○デザイナーにとっては、デザインが下請法の対象となったこともあり、意匠権に対する関心が高まる傾向にあるのではないか。」
文化審議会 著作権分科会報告書 [2−(2)]|文部科学省 https://web.archive.org/web/20140706101825/http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/06012705/003/002.htm
「「著作権法に関する今後の検討課題」(抄)/(平成17年〔2005年〕1月24日文化審議会著作権分科会)」


▼コンテンツ業界の底辺でイマをぼやく:第3回 「見過ごされているわけで……」──底辺の著作権事情にぼやく〔2008年04月28日〕|ITmedia +D モバイル http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0804/28/news090.html
「ただ、まだ著者本はいい方です。最終的には出版契約書を交わすわけですし、著作権の所在も分かりやすいですから。ちなみに、創作性のあるものに関しては、下請法の対象外とされているので、その問題もクリアです。しかし、雑誌での無記名原稿やデザイン、書籍のゴーストライティングなど、つまりは下請法が適用される案件(詳しくは「出版社における改正下請法の取り扱いについて」〔日本書籍出版協会〕を参照してください)で、契約書を結ばない〔出版業界〕っていうのはどうかなと……。正直、自分の経験で言いますと、そうした仕事で契約書を結ぶことは少ないといえます。」
▼アニメ制作(情報成果物作成委託)と下請法〔2009/1/28〕|著作権で稼ぐ https://web.archive.org/web/20160327235040/http://blogs.yahoo.co.jp/gut_expert/56678267.html
公正取引委員会は〔2009年1月〕23日、「アニメーション産業に関する実態調査報告書」を公表した。/今回の調査により、アニメ制作会社の4割以上が発注元から著しく低い制作費を押しつけられていることや、下請法3条による発注書面が交付されているケースはわずか2割程度であることが明らかになった。」
▼情報成果物とは〔2011/2/14〕 - 著作権で稼ぐ https://web.archive.org/web/20180426031609/https://blogs.yahoo.co.jp/gut_expert/60278842.html


▼JIII 知的財産権判決速報|財団法人 発明協会 http://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/index.jsp

*1:下請法の適用対象事業者に関する資本金額による条件は、第7条(発注者について)、第8条(受注者について)にある。「7 この法律で「親事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。」「8 この法律で「下請事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。」以下を参照。 →http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=331AC0000000120

*2:また、逆に、仮に「単行本の表紙イラスト」が下請法の適用を受けるとすると、その成果物は、下請法の適用を受けずに制作されたイラストと比較して、どのような法的地位の違いを生じることになるか?

*3:改正 平成28年12月14日 公正取引委員会事務総長通達第15号。 →▼下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準:公正取引委員会 http://www.jftc.go.jp/shitauke/legislation/unyou.html